お茶本来の味や香りへのこだわり
森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

「ALL GREEN」の「11 やぶきた」を育てている森さん。

「やぶきた」は、日本のお茶生産量の約7割を占める、日本人には馴染み深い品種です。コクのある苦味と滋味深い甘味のバランスが絶妙なのが特徴です。

どのお茶農家さんも「やぶきた」を育てている中、「やぶきた」と共にお茶業界で活躍するためには、より美味しいお茶を作ることは非常に重要かつ困難なことです。

「やぶきた」の茶葉本来の美味しさを追求したお茶づくりの秘訣を探るべく、私たちは森さんのもとへと向かいました。

やぶきたの美味しさの秘訣とは。

静岡駅の市街地から車で約30分、あたりは自然豊かな風景に変わりはじめ、澄んだ空気がいっぱいにひろがる茶畑が見えてきました。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

「とりあえず、こちらへどうぞ。」と工場から出迎えてくださった森さん。
初めは少し緊張した面持ちではありましたが、庭師として住み込みで3年働いた後にお茶農家を継いだこと、お寺での経験、そしてお茶の名所である静岡・本山地区で続けるお茶づくりのことなど、様々なことを教えて下さいました。

どの経験も大変なことばかりだったとお話しをされながらも、その表情は意外にも楽しげなご様子でした。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

特に詳しくお話をしてくださったのは、“お茶の飲み方”について。

「お茶は、まず水からだよね。軟水はもちろんだけど、カルキには気をつけないとね。」

実は、お茶を淹れる時の水が硬水だと苦みや渋みが強くなり、クセのある味わいに。また、水道水のカルキ臭によってお茶の香りが損なわれることもあるそうです。

森さんは、美味しいお茶を飲むのならまずは水からだ、と続けます。

「ちょっと待ってね。」と、森さんが工場の奥から持ってこられたのは、冷えたペットボトルの水と、茶葉と急須。急須に茶葉をさっと入れ、ペットボトルの水を急須に注ぎながら教えてくれました。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

「冷茶を淹れるとなると、 お湯で出してから冷蔵庫に入れて半日、1日とかってやっちゃうんだよね。そんなことしなくても、10分でお茶は淹れられるんだよ。そんなに時間はいらないんだ。でも、ほとんどの人がそういうのは知らないよね。」と森さんは笑います。

「工場に来る人にもこうやって出すと、びっくりされるんですよ。少しの量でも、飲んでみると口に甘みが残るから、ある程度の時間はもうそれで満足できちゃうよね。」

実際にお茶を飲ませていただきました。強い甘味と、まるでお出汁のような旨味が感じられ、お茶本来の味がここまで口の中に長く残るということに驚かされました。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

「淹れ方のこだわりなどはありますか?」と森さんに伺うと、

「淹れ方にはこだわってないよ。茶葉の量なんか目分量、お水も適当、急須がないならコップでもいい。時間をかけなくても道具がなくても、簡単に美味しいお茶が飲めるんだよ。」と、笑いながら教えてくれました。

そう言いながらも、お茶を淹れる水、美味しさを引き出す淹れ方、そしてお茶を飲むためのグラスも揃えた、など随所に森さんのこだわりが感じられてとても印象的でした。

また、ご自身でお茶の葉を炒ってほうじ茶を作ったり、炒ったお茶をチップスのように食べたりなど、お茶の楽しみ方も次々と教えてくださいました。

静岡県本山地区で歴代5代に続く、静岡・本山茶とは

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

静岡県の茶産地の中で最も古い歴史を持つ静岡本山茶は、静岡市を縦断する安倍川とその支流である藁科川(わらしながわ)の流域周辺で作られています。

その静岡本山茶は、新芽の葉肉が柔らかくて鮮やかな緑色を呈しており、形状がツンときれいに伸びているのが特徴。透き通るような爽やかな香りと旨味に満ちており、口当たりはとても優しく上品な味わいとなっています。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

お茶の葉を、針のように長く綺麗な形状になるように作ることが難しく、現在ではこういった昔ながらの製法で作られた本山茶は少ないそうです。

森さんの作る「やぶきた」は、お茶本来の美味しさはもちろん、形状にもこだわっています。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

「茶葉は、刈ってきたらすぐに蒸すんです。蒸す時には機械の上の蓋を取った状態で蒸しちゃってます。そうすると余分な蒸気がかからず、むらぼけが起きたり、傷んで茶葉の裏が白くなってしまうようなことが減るんです。」

森さんのお茶は、全て浅蒸し。
そのため、茶葉を蒸しすぎないよう、蒸す時間(蒸熱時間)を調節することが重要になります。お茶作りにはこの蒸熱と、「粗揉」の工程が重要だと森さんは続けます。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

「粗揉」とは、どんな工程なのでしょうか?

「粗揉機という機械の中で茶葉を揉んで、葉っぱが針状になるように茶葉の形状を作ります。」

深蒸し茶だと、この工程でお茶の葉が折れて形が崩れてしまい、お茶を淹れた時に1枚の葉っぱが綺麗に開く様子は見られないそうです。

茶葉の形に続き、森さんは粗揉による味の変化についても説明してくださいました。

「お茶はしっかりと水分を抜きながら揉み込まないと、“旨味”が出てこない。
でも、揉む力が強すぎると茶葉が折れちゃうから、調節しているんだよ。」

しっかりと揉まないと旨味が出づらくなり、味も薄くなってしまうんだそう。そのため、揉む作業がお茶の味の決め手となるそうです。

この肝となる工程は、まさに熟練の技。
日中から夕方にかけての温度変化や湿度、お茶の葉の水分量など、その時の変化を察知して機敏に対応しているそうです。
ただ単に機械を調節して使用するのではなく、日毎に変わる環境を受け止めながらこれまでの経験と知識をフル動員した上で機器をセッティングし、品質の良い浅蒸し茶を目指しているとのことでした。

整えられた茶畑
美味しさの秘訣とは。

「今から茶畑へ行ってみて、畑を見ればたぶん色々とわかると思いますよ。」と、自信満々で答える森さん。

森さんの茶畑は一面若々しい緑色になっていました。
茶園を歩いていくと、土がふかふかになっていることに気づきました。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

「土を柔らかくすると、茶の木がしっかり根をはるんだ。そうすれば根っこが下まで入っていくよね。だから土を柔らかくするのが大事なんだよ。大きな機械を入れると、その重さで地面が固くなってしまう。それが嫌で、いつも機械を入れずに嫁さんと2人でお茶を刈っているんだ。」

そう言いながら、森さんは長い棒を茶の木の辺りに差し込みます。
棒はスッと土の中に刺さりました。
柔らかい土づくり、この土台作りがお茶の成長を左右するそうです。

「もの作りって大変だよね。でも僕は中途半端にやるのは嫌なんだ。しっかりこだわっていきたい。」

お茶の工場や土や茶園の選定、お茶の飲み方だけでなく、仕事への向き合い方やお茶づくりにも森さんのこだわりが見受けられました。

ものごとをまんべんなく経験してきたからこそ、自分の今までの経験は全てが繋がっている、どれもが大切なんだと、森さんはいいます。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

お茶と共に、今を生きる。

「仏教的な教えからきているかもしれないけど、今を生きるしかないと思っているんだ。」と、森さんは続けます。

お茶農家を継いだばかりの頃の森さんは分からないことが多く、人よりも失敗することが多かったとのこと。失敗を繰り返しながらも、自分の求めるお茶づくりを続けてこられました。

なぜこのような茶葉を育てられるのか、そのポイントを伺ったところ、意外な回答が返ってきました。

「ポイントなんてないよ。お茶づくりは苦労の連続で、まともなお茶を作るのがどんだけ大変かってことだよね。普通のお茶を目指して、毎年“今”を頑張っているよ。」

そう笑いながら答える森さん。
「普通」という言葉には、中途半端を嫌う森さんの、お茶へ求めるクオリティを満たす為にこだわりを持って向き合う姿勢が隠れていました。

お茶本来の味や香りへのこだわり森さんが作るお茶の王道「やぶきた」

できることを一つずつ堅実に
そして、新しい挑戦へ

今後のお茶づくりについて森さんに伺いました。

「今できることをやるしかないよね。その年その年でお茶は違うから、これからもそれに合わせて作っていくよ。」

「現役でいる限り新しい品種を育てていきたい。」

最近では、耕作放棄地を借りて幼木を育てているのはもちろん、新しい品種の栽培にも挑戦されているそうです。

やぶきたの他にも、本来の美味しさを活かした質の高いお茶を育てている森さん。今後を見据えて挑戦し続ける姿に、どんなお茶が完成するのか期待が高まります。


森さんのお茶づくりから垣間見えたのは、土作りから茶葉の形状に至るまで、できることを一つずつ、糸のように紡ぎあげながら完成に近づけていく姿。

最後までこだわりをもって丁寧に仕上げたからこそ、森さんご自身が納得し、自信を持って提供できるお茶となっています。

ただ純粋にお茶づくりに真っ直ぐ向き合うその姿に、胸が熱くなりました。

こだわりはないと笑いながら言う姿の裏には、

「中途半端ではなく、精一杯今できることをする。」

仕事に真摯に向き合う、職人としての森さんの姿がありました。

森さんが丹精込めて作った「11 やぶきた」はALL GREENでお楽しみいただけます。
どうぞお楽しみください。