全国の生産量のほとんどが鹿児島県で栽培されているという「ゆたかみどり」。
「12 ゆたかみどり」は、鹿児島県南九州市にある製茶工房ちらみで育てられました。
製茶工房ちらみは複数の農家から構成される団体で、西野さんが代表を務めています。
製茶工房ちらみは、15年程前に西野さんによって設立されました。
「我々の団体は複数のお茶農家さんでやっているから、お茶の摘採や被覆など、農家さん同士で協力し合いながらお茶づくりをしているんです。
新しい組織として、地域の茶業を担えるような存在になれればと思って始めました。」
近隣のお茶工場もお誘いしたけど、当初はなかなか話がまとまらなくて大変だったそう。
そこで西野さんはみんなに製茶工房ちらみの存在を知ってもらうため、とあるチャレンジを始めました。
富士山山頂から届くお茶
なんと西野さん、少しでも多くの人に自分たちのことを覚えてもらえるようにと、富士山の山頂に登り、そこからお茶を送ったのだそう!
富士山頂から送る郵便物には“富士山頂”という消印がつき、印象に残るお届け物になるのです。
知り合いの人に送る時も鹿児島県内のお茶屋さんに送る時も、富士山の山頂から送り続けること数年。
西野さんの制服の名前を見た人から、少しずつ声をかけてもらえるようになったそうです。
鹿児島で育つお茶の葉ならではの工夫
一生懸命な取り組みから、徐々に周りの人たちに覚えてもらえるようになった西野さん。
みなさんに美味しいお茶をお届けするために意識していることを伺ってみました。
「粗揉工程をしっかりやってます。
鹿児島の茶葉は葉肉が厚くて茎も太いものが多いので、粗揉や下揉みで水分をしっかり揉み出してやるんです。
そうすると味や風味が落ちるのを防げるんですよ。」
と西野さん。
「あとね、通常のお茶は3番茶や4番茶までやるんだけど、うちは2番茶までしかとらないんですよ。深刈りして、力強くて新しい芽ができるようにしてやるんです。」
味の豊かなお茶を作るため、先々のことも考慮しながらお茶を育てているんだそう。
お茶のことをもっと伝えたい
西野さんはお茶の楽しさや素晴らしさを知ってもらうため、茶摘みや製茶体験を積極的に実施しています。
「実際に現場に来て、生産現場のことをもっと知ってもらえたらと思ってます。
お茶の新芽が伸びている時期に若い人に来てもらって一緒に茶摘みをしたり、お茶を一杯飲んだり、そういった体験を通してお茶の素晴らしさを実感してもらえれば嬉しいなぁ。」
そう語る西野さんの口調はとても穏やかでした。
そんな西野さんのもとには毎年多くのこどもたちが体験に訪れ、笑顔になって帰っていきます。
西野さんの挑戦はこれからも続く。
未来を見据えた活動を。
新しい品種の栽培にも精力的に取り組んでいる西野さん。
将来的に挑戦してみたい品種について伺ったところ、摘採がもう少し早めの中手(※)の品種を育てていきたいと考えているそう。
「有機栽培も視野に入れて虫害や病気が少ない品種を展開していきたいと思っています。せいめいやゆたかみどりなんかは有機に向いているんです。」
※中手(なかて):早生や晩生を除く、中頃に摘採できる品種のこと
地域のお茶業界のことやそこで働く人たちのことを考え、人一倍努力と工夫を続けてきた西野さん。
お茶の未来を見据えた試みには、知覧茶の守り人としての責任感ある眼差しが向けられていました。
そんな西野さんが育てたお茶「12 ゆたかみどり」は、とてもあたたかな風味をもつお茶です。その豊かな味わいをどうぞお楽しみください。