品種の魔術師が作る 清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

「ALL GREEN」のラインナップである「めいりょく」を育てている「秋山園」。
こちらの農園では、生産から販売まで奥さまと二人三脚で営んでいます。

「めいりょく」は、まるで柑橘を思わせるような、清涼感や清々しさを帯びた爽やかな味わいが特徴です。

今回私たちは、個性を持つお茶がどのようにして生み出されているのかを知るため、静岡県の「秋山園」へと向かいました。

山のお茶を守る、明治時代から続く富士の麓の茶産地

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

以前は輸出産業としてお茶づくりが盛んでしたが、お茶農家の数が少なくなってしまった現在、そんな中でも、秋山園は明治時代からずっとこの地でお茶をつくり続けているそうです。
坂道を登り富士市を一望できる開けた場所に、のどかな茶園がひろがり、そこには品種の魔道士と呼ばれる茶師がいらっしゃいました。

品種の魔道士と呼ばれる由縁
教科書にないことを探し続ける

秋山園のお茶づくりで特に注力しているのが「それぞれの品種に合わせたお茶づくり」。
実は、秋山園では「めいりょく」の他にも、約40種類以上の品種茶を作っています。

それぞれの品種特性を理解してお茶の育て方や製造方法を工夫することで、お茶の個性を十分に活かしています。
新しい品種の栽培や製造方法の思考錯誤を通して得られた経験から、静岡県のお茶関係者からは“品種の魔道士”と呼ばれているんだとか。

秋山さんが、様々な品種を作るようになったきっかけは何だったのでしょうか?

他を見ることで本質の良さを理解できる

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

「日本人について考える時には、外から見た方がいいんですよね。逆を言うと、 世界の人たちを知ることによって、日本人がよくわかるようになる。それと同じように、やぶきた以外の品種にたくさん触れることによって、やぶきたはこんなに素晴らしいんだと気づくことができるんです。

やぶきたというお茶の品種について考えると、他の品種のお茶ではやぶきたよりもこの香りが特徴的とか、味が良いということに気づくことができるんですよ。
色々な品種において、やぶきたよりも優れた点を見つけていくと、あれもこれも面白い。というように、そのお茶の魅力を知ることができるんです。」

と、楽しそうにお話をする秋山さんは、新しい品種についていち早く試験場と意見交換をし、その結果をお茶づくりに反映しているそうです。

さらに興味深いことに、秋山園ではやぶきたに近い品種はあえて栽培をしていないそうです。その理由は、お茶の個性や違いが見えづらいから。
もともと作っているお茶と比較して違いの少ないお茶を栽培する必要はない、という考え方で、個性や特徴のあるお茶を育てているそうです。

生産者でもあり、
エンジニアでもあり研究者

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

工場を見せていただくと、昔から使用されている機械から最新の機械までずらりと並んでいる様子に驚きました。

「小ロット(製品を少量しか製造しないこと)のお茶づくりをすることで常に新しいことを追求し続けることができるため、秋山園ではいちばん小さいロットでは生葉で約500gから作れる機械を持っています。小ロットで製造し、品種を選びながら製造方法など色々なことを検討していくという流れで、様々な挑戦ができるんです。もうこれらの機械は古くて手に入らないもんでね。この小さい機械を持っているところは、静岡県内で私が知ってるところで2軒か3軒だけれども、ちゃんと使いこなせているところはほとんどない。」

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昔から使っている機械が壊れたら、秋山さんご自身で修理されてしまうのだとか。

「小さいロットで作る時は、丁寧にお茶を作る場合と、品種ごとに特徴などを調べたい場合になります。特に手摘み及びはさみ摘で摘んだ茶葉を、上級なお茶にする時は全て昔の機械で丁寧に作ります。また、品種特性を見つける時も、少量で色々な点を微調整しながら作業を進めていくんです。」と語る、秋山さん。

秋山さんがお茶づくりで特に意識しているのは、「みんなが気付いていないことにいち早く気が付くこと。」だそうです。いわゆる教科書には載っていないことを、仮説を立てて自分で検証して確かめるやり方で、365日試行錯誤しながらお茶づくりに向き合っているとお話してくださいました。

常に新しい品種に挑戦し、発見し続けるその探求心が、秋山園の魅力の一つだと言えます。

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

私たちがイメージする、茶畑で作業をしている農家さんのイメージとはだいぶ違うことに驚かされます。秋山さんは、茶農家でもありながら、工場をもち、機械を駆使するエンジニアでもあり、お茶の品種について熱心に研究されている研究者でもありました。

静岡県でもトップクラスで育つ新茶
お茶と休眠の関係性

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

富士市は比較的、新茶ができるのが遅い地域だと言われています。
それは、平地でつくられる「里のお茶」と比べて、日照時間が短く昼夜の寒暖差が大きい環境である山の気象条件の中で育つことが要因だそう。

しかし、秋山園では今年は4月2日、来年は3月頃には新茶ができるそうです。どうすれば早くお茶ができるのか、完全に理解しているからこそ実現可能なのだそうです。
「どんな品種の組み合わせで作れば、いつ新茶ができるかがわかる。そこはかなりポイントですね」と、秋山さん。

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「今の時代に逆らわない。うちは、いわゆるエネルギーを使って温めて早く新茶を出すってパターンじゃないです。自然の状態でいかに早く出すかを考えているので、他の人はびっくりしますね。屋久島が新茶始めますって時には、秋山園も新茶が出始めてますから。」

どのように新茶を早く作り出すのか、さらに詳しくお話を伺いました。

「結局、桜と同じなんですよ。桜は一定の寒さの期間をおき、それで暖かくなると花が開く。それと同じことがお茶にもあるのだろうというのが、私の仮説なんです。 品種によっては一定の休眠期間を経たものは、暖かくなれば一気に開くということに気が付きました。これを、“休眠打破”と言うんです。」と語る秋山さん。

休眠打破とは、「休眠状態にある種子・冬芽などが、ある特定の刺激を受けたのち、活動状態になる」こと。

お茶の木が、秋には栄養を、冬にはしっかり休眠を取って力を蓄えることで、春に力強く芽吹くことができるメカニズムにいち早く気づけたことが大きな発見だそうです。

休眠打破にはある程度の気温の低さが必要となっており、秋山園は標高が240mと高いため、このメカニズムを活用することができるそうです。

また、お茶本来の香りを大切にするために深蒸しにはせず、昔ながらの技術と知識を活かして普通蒸し製法にこだわっているとのこと。毎年様々な気象の影響を受けるお茶が、1番輝くであろう製法を追及したお茶づくりをされています。

夫婦二人三脚で作る秋山園の思い

秋山園ではご夫婦でお茶づくりをされているそうで、ご夫婦でのお茶づくりについて伺ってみました。
「はい、一言で言うなら、ありがたいことでございます。」と恥ずかしそうに答える秋山さん。

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

奥様の静子さんは、実は農家の生まれ。
ご実家が茶農家である勝英さんの元へ嫁がれてからは、夫婦二人三脚でお茶づくりをされてきました。

「お茶の販売をする時に、お茶について知ってほしいと言われ、茶園の作業なども言われるがままやってきました。それらが今の土台になっていて、お客さんに全て説明することができるんです。」と、お茶を注ぎながら話す静子さん。

お2人はどんなお茶を目指しているのでしょうか。
「お茶が美味しいかどうかは飲んだ人の表情を見れば、大体分かりますね。 満足度は人それぞれ違うのかもしれないけれど、 納得していただければにこっとされるんですよね。もう、それだけに尽きますね。」と秋山さんはいいます。

「お客様の笑顔を想像しながら土作りから始めます。秋山園では、伝統農法である“茶草場農法”を実践しています。土を深く耕すので雑草が生えやすくなって草取りが大変なんですが、頑張っております。」と話す秋山さん、「今年の夏は特に大変だったんです!」と静子さん。

高温多湿という雑草に好環境な夏だったため、雑草がだいぶ生えてしまったようです。

「秋山園では長年減農薬で栽培しており、必要最低限の処置を茶畑にしています。人間でいうと、風邪をひいたら早めに対策をして、大事に至らないようにするのと同じです。病害虫と全面的に対峙するのではなく、少しはかまわんが我々を大きく邪魔せんでくれよ、といった精神で栽培に取り組んでいます」と、秋山さん。

雑草対策は非常に大変な作業にも関わらず、お客様に安心して美味しいお茶を飲んでいただくためには苦労もいとわない姿勢がとても素敵でした。

和紅茶やフレーバーティーを楽しむ
そして、新たな品種へ新たな挑戦

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

この先どのようなお茶を作っていくのでしょうか。

「シングルオリジンのお茶はもちろん、今は紅茶も色々作っていまして、今後はハーブティーやフレーバーティーにも挑戦していこうと思っています。バランスが本当に難しいですよ。でも楽しいです。」

そう語る秋山さん、やりがいのある新しい挑戦を楽しんでいるようにも見えました。
続けてお話をしてくださったのは、中国茶などへのチャレンジです。

「味の日本茶、香りの中国茶と言われるように、中国茶には魅力的な香りのお茶が多いです。日本での中国茶の生産はまだまだ未開発で、品種の持つ特徴を最大限引き出す製法があるだろうと試行錯誤しています。今は青心烏龍の玉緑系に挑戦し、強い香気を引き出すことを目標に試作試案中です。」と語ってくださいました。

今もなお、新たな品種に挑戦し続ける秋山園の今後のお茶づくりに注目です。

丁寧に作る
そして、一点もののお茶に。

様々な品種を栽培し、中国茶やフレーバーティーなど新しいことにもチャレンジし続ける秋山さんに今後の目標について聞きました。

「まず基本的には量を作らないこと。量を作らず、丁寧に作る。もう大量生産の時代じゃないですもん。いいものっていうのは、やっぱり一生ものなんですよね。皆さんが着ていらっしゃる服も、例えば1点ものの良い服を1着買うじゃないですか?そういうような満足度の高いお茶があってもいいんじゃないかなと思って。」

品種の魔術師が作る清涼感や清々しさを感じる秋山園の「めいりょく」

その人にとって一点もののお茶を丁寧につくりあげる。
そのために、土作りからお茶の製造、販売まで全てを行っている秋山さんのお茶づくり。
お茶作りのあらゆる工程を大切にするからこそ、飲む人の満足そうなほっこりとした笑顔を引き出せるのだと感じました。

様々な品種の特徴を理解し、それらを活かしたお茶づくりを実現しつつ、日々挑戦を続ける、そんな品種の魔術師秋山さんが作ったお茶は、みなさまのお茶時間をより特別なものとしてくれるでしょう。

秋山さんがこだわりぬいて育てた「めいりょく」の味わいと香りを、ALL GREENでぜひ、味わってみてください。