芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

杉山農園さんは、中山間地域である静岡県清水区茂畑にあります。
ここは標高が高く、朝晩の気温差などチャノキへの適度なストレスによって香り高いお茶が育つことで有名です。

今回は、この地域で「静7132」を育てる「杉山農園」を訪れました。

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

強い香りを引き立てる
「クマリン」の芳香。

「静7132は、クマリンの香りがすごいでしょ? 他のお茶よりも香りに特徴があるから、その香りをできるだけ消さないようにするにはどうすればいいか、ここでは品種の特性を活かしたお茶を作っているんです。」と杉山さん。

クマリンとは、桜の葉や桜餅のような甘い芳香をもつ香り成分です。
珍しい桜の香りのお茶は清水区ではブランド茶として流通しており、区内の茶農家さんは一丸となって「静7132」を作り、茶業界を盛り上げています。

特に杉山農園が作る「静7132」は、他の茶農家さんのお茶よりも桜餅の香りがはっきりと出ています。

その理由について、「品種の特性を活かしたお茶づくりをしているからこそ、ここまで香りに大きな差が出る」と教えてくださいました。
それでは、品種の特性を活かしたお茶づくりとは一体どのようなものなのでしょうか
 

お茶の個性を活かすお茶づくり
「静7132」の品種特性とは

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

「実は、静7132のクマリンは、茎の部分に多く含まれているんです。
静7132の香りをより強く引き立たせるため、僕はこの特徴を活かして茎もお茶に加えています。」

杉山さんは、茎の成長を促すためにみる芽を伸ばし、香りの強い茎を育てる工夫をしていました。

※みる芽…まだ葉になる前の状態の柔らかい芽のこと
 

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

「茎が入ってしまうと、一般的なお茶と比べて見た目の点で劣ってしまうため、お茶業界からの評価が悪くなる。だから、お茶屋さんは普通茎を取っちゃうんですよ。でも、お茶を飲む人からしたら、見た目ってあまり関係ないですよね。だから僕は静7132には茎を入れた方が、個性を活かせると思っています。」

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

一般的なお茶のセオリーを覆す考え方で、香りに特化したお茶づくりをされている杉山さん。

「「静7132」の香りを残すための工夫として、精揉(せいじゅう)工程では乾燥温度を低く設定し、他のお茶よりも長い時間をかけて丁寧に乾燥させています。そのため、一般的なお茶工場よりも精揉の機械を多く設置しているんです。
また、蒸す時間が長くても香りが飛んでいってしまうので、注意して蒸しています。」
と杉山さん。

杉山農園では、徹底した管理をしていました。

精揉…茶葉を乾燥させながら形を整える工程

これからのお茶の将来
人が集まる農園に

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

「これからまた緑茶ブームがくる。その時に本当に美味しいお茶を、習慣的に飲んでもらえるようにしたい」と語る杉山さん。

清水区茂畑のお茶畑は、近年、後継者不足で耕作放棄地になってしまうケースが増えてきているそうです。そんな中、杉山さんは後継者がいなくなったお茶畑を借りて、この先の未来を見据えて新しいお茶の苗木を次々と植えています。

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

茶業界の逆風が強い中でも、常に挑戦を続ける杉山さん。
今年は新入社員さんが採用されたそうです。

チャレンジングなお茶作りの姿勢や前向きな取り組みが魅力的な杉山さんのもとにはたくさんの人が訪れるようになっています。

お茶づくりはクリエイティブな仕事

芳しい桜の香りが広がる 杉山農園の「静7132」。

お茶づくりとはどんなお仕事でしょうか?という質問に対して
「お茶づくりとは、クリエイティブな仕事だと思っています。」と、杉山さん。

「伝統的な作り方とか品種の特性を理解することは大切です。もちろん今までの方法を守ることは大事ですが、全てを守るだけでは、新しいものは生まれてこないですよね。新たなお茶の作り方や特性を見つけるためにより良いものを取り入れ、その技を磨きつつ発展させていくことで、お茶に関する新しい考え方や製法が生まれてくる。結果として、お茶づくりの新しい文化が生み出されていくんです。」と熱く語ってくださいました。

お茶づくりの技術を引き継ぎながらもこれまでの概念を覆し、お茶の新しい特性を積極的に発見していくその姿は、まさに「守破離」を体現している、そう感じました。

そんな彼が育てた「静7132」は、茎が入った特徴的な見た目と唯一無二の香りで海外からも反響を得ているそうです。
今後も、杉山さんのお茶づくりから目が離せません。

杉山さんの情熱溢れるお茶作りでうまれた「静7132」を、どうぞ存分にお楽しみください。