日向夏、マンゴー、ライチなど、トロピカルフルーツの名産品がおいしい宮崎県。「晴れの日が最も多い県」としても知られる地域です(※)。その温暖な気候は、お茶をおいしく育てるにも最適。今回は、「ALL GREEN」の「ゆめかおり」を育てる児湯郡新富町(こゆぐんしんとみちょう)の「福山製茶」へと向かいます。
※2019年の気象データよりお茶と馴染みが深い児湯の町へ。
季節は2023年10月末。暦の上では秋ですが、上着がいらないほど、心地いい暖かさがまだまだ続いています。
宮崎の空港から、海沿いの道を1時間ほど車で走ると辿り着く児湯郡高鍋町。この辺りの茶農家さんは、ご自身の茶畑で摘み取った茶葉をJA児湯の製茶工場「ティーファクトリー」で仕上げる方もいるそうで、まずはティーファクトリーへと向かいました。
「今日はわざわざ来ていただいてありがとうございます。どうぞ、工場の方もぜひ見ていってください」と、出迎えてくれたのは茶農家の福山さんとJA児湯と経済連の職員のみなさん。帽子を被っているのが、「ゆめかおり」を育てている福山さんです。
「ティーファクトリーでは、20件ほどの茶農家さんが茶葉を製茶しに来られます。この辺りは、昔から茶業を営んでいる人が多いですね。すぐ近くに日本遺産として登録されている持田古墳群がありますが、そこもお茶畑に囲まれているほど。この地域の人たちにとって、お茶づくりというのは非常に身近なものなんです」
なんでも、地域の主に高校では「お茶の淹れ方」の授業があるのだとか。また、工場で製造された荒茶の一部は「手洗い用」として保育園などへ提供しているそう。そのお話を聞くだけで、この地域でお茶がどれだけ馴染み深い存在なのかが伝わってきます。
地域とお茶の関係や工場の設備に関する説明を聞きながら見学させていただいた工場は、とても大きく、見ているだけで圧倒されます。
また、工場内には福山さんの他にも何名かの茶農家さんがいらっしゃいました。親しげに職員のみなさんと話す様子を見ていると、この場所が地域の茶農家さんにとってとても身近な存在であることが伝わってきます。
個性のある茶葉こそ、
ブレンド茶ではなく
シングルオリジンで楽しみたい。
しかし、それだけお茶と馴染みが深い児湯郡でも「ゆめかおり」は少し変わった品種というイメージなのだそう。この地域で育てているのは、福山さんともう二軒の茶農家さんだけ。非常に稀少なお茶ですが、一体どんな味がするのでしょうか。
「少し癖のある香りと味わいが特徴です。甘みが強く、冷やして飲むのが僕は好きですね」と、福山さん。
「そう、癖がある……なんて表現すればいいんでしょうね。ただ、飲んだ瞬間から普段みなさんが飲まれているお茶とは違うという感覚がわかると思います。改めて言葉にするのは難しいですけどね」と、JA児湯と経済連のみなさんも続きます。
「ゆめかおり」は、以前「ALL GREEN」でもご紹介した「さやまかおり」と、「宮崎8号」という宮崎生まれの品種を掛け合わせて生まれたもの。「さやまかおり」の持つクチナシの花のような香りをどこか受け継ぎつつも、爽やかでスッキリした風味が特徴だそうです。
しかし、福山さんはそもそも何故「ゆめかおり」を育てようと思ったのでしょうか。
「単純に、新しいものが好きなんですよね。一般的に評価の高いお茶や認知度の高いお茶ももちろん育てていますが、それだけじゃなく、うちらしい個性を出していきたい想いもあって。少し変わった品種などを見つけるとつい栽培してみたくなんです」と、福山さん。
福山製茶では他に、「さきみどり」「さえみどり」「やぶきた」「ゆたかみどり」「あさつゆ」などの品種も育てているそうですが、「さきみどり」は、まるでミルクティーのような香りがするのだとか。その例えだけで、私たちが普段飲んでいる緑茶とはまるで違うことが伝わってきます。どんな味わいか、ぜひ試してみたくなりますね。
厳しい冬こそ、茶の木に寄り添って、寄り添って。
他にも、福山製茶の成り立ちや栽培のこだわり、扱っている肥料の種類など、さまざまなことを教えてくれる福山さん。お茶づくりと真摯に向き合っていることが伝わってきます。
JA児湯と経済連のみなさんに福山さんの印象を聞いてみたところ、返ってきた言葉は「真面目で誠実」。
「福山さんはね、茶畑を霜などの被害から守るため、冬場は敷地内にある小屋に泊まり込みで茶畑を見守っているんですよ」
そう言われて茶畑の方を見せていてだくと、確かに、敷地の真ん中に小さな建物が。農業用機械や農具などを収められた空間の奥にある扉をのぞくと、コタツなどが置かれた個室がありました。冬場になると、ここで一晩を過ごしているそうです。
一般的に、茶農家さんの繁忙期は一番茶を摘み取る春先から夏頃にかけてと言われています。でも、おいしい一番茶を摘み取るためには、冬場の手入れも欠かせません。霜が降らないよう水を巻いたり、風を当てたり……福山さんは、そうした対策を付きっきりで行っているそうです。
「いえいえ、そんな大したことじゃないですよ。ただ、冬場の泊まり込みはうちでは代々ずっと続いていますね。この辺りは温暖な気候ではありますが、冬場は気温も下がりますし、油断はできないんですよ。霜の対策はスピードが大切ですし、水を蒔くタイミングや風を起こす時間を少しでも誤れば、品質から収量までがすべて変わってしまう……決して気は抜けませんからね」と、謙遜気味に話す福山さん。
そのひたむきな姿勢は、正にプロフェッショナル。誠実にお茶づくりを行っていることが伝わってきます。
個性ある風味の茶葉を贅沢に、芋焼酎と。
宮崎らしいお酒の楽しみ方を、ぜひ「ALL GREEN」で。
宮崎と言えば、お酒の文化も豊かな地域。100年以上続く有名な焼酎の酒蔵を始め、たくさんの酒造場があります。
「この辺の人はみんな焼酎が大好きですね。飲むのはもっぱら芋焼酎。特に茶農家の人はみんな、自分たちの茶畑で育てた茶葉を粉末にして居酒屋やスナックに持参するんです。それがすごくおいしいんですよね。茶葉の種類によって少しずつ風味も変わってきますし、そういう楽しみ方をしてみるのもいいと思います」
焼酎のお茶割りと言えば、宮崎と言わず全国各地で楽しまれているお酒の飲み方。しかし、「割るお茶の種類」にまで注目している人は意外と少ないのではないでしょうか。
お気に入りの焼酎に、お好きな品種のお茶を入れて飲めば……きっと、いつも以上にお茶の風味が引き立つはず。焼酎とお茶でほろ酔いになりながら楽しむひとときは、まさに「ゆめかおり」という名前がぴったりではないでしょうか。お酒が好きな方にも、お茶が好きな方にも、オススメしたい大人の飲み方です。(※)
「“ゆめかおり”のような個性の強い品種は、ペットボトルなどで飲むブレンド茶には適さないと言われがち。独特の香りや甘みは、業界ではあまり高く評価されなかったりします。でも、“ALL GREEN”のようなブランドにこうして注目していただけるのはとても有り難いなと思います。ブレンド茶では味わえない、“ゆめかおり”らしい味わいを、ぜひ一人でも多くの方に楽しんでいただければ嬉しいですね」
ひたむきに、誠実に、お茶の品質を磨き続ける福山さん。彼が育てあげた「ゆめかおり」のやさしい風味を、ぜひお楽しみください。
※20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。本記事では、20歳以上の方の「大人のお茶の楽しみ方」として焼酎との飲み方をオススメしています。